すみれ、ありがとう!

 実家の母から連絡が入りました。

 悲しい知らせです。飼い猫のすみれが息を引き取ったとの事でした。

 

 

 すみれは、ちょうど20年前の今頃、私が拾った猫でした。

 当時、私は名古屋で独り暮らしをしていました。近所のスーパーからの帰り道、子猫が2匹道で跳び回って遊んでいました。車通りのある道路です。私は思わず声をかけました。

「あんたたち、そんなことしてたら車に轢かれてしまうわ!!」

すると、1匹が

「みぃゃ!」

と返事をして寄って来ました。白と黄土色のトラでした。もう1匹もトラにしぶしぶ附いてやって来ました。その猫は白に黒とこげ茶と茶色のいわゆる三毛でした。

「えぇっ、だめだめ!!家では飼えないよぉ!!だって、飼っちゃあいけないんだもの。あっちへ行ってよぉ!」

私が慌てて追い払っても、足元でそばえて

「みぃゃ、みぃ~ゃ!」

猫なで声のトラ、三毛はその横でそっぽを向いてちょこんと猫座りしています。私は小走りに逃げ出しました。アパートの階段を3階まで駆け上がりましたが、ちびの癖に一所懸命トラがついて上がってきます。三毛もやっぱり仕方なさそうに上がってきました。

 私はアパートの鍵を開けるのを躊躇って30分、とうとう根負けして扉を開けました。トラは私より先に中へ、

「あんたはどうするの?」

すると、三毛は

「ぎびぃや。」

しゃがれた濁声で小さく返事をして、のそのそ入ってきました。

つづく

ふるかわ きみこ