きみこ、臨時休暇をとる。

  猫たちとの日々は安穏に移ろっていきました。ききょうはいつも甘えん坊で、擦り寄ってきてはゴロゴロとのどを鳴らし私の顔を覗き込んで

「みぃあ!みぃやぁ!」

 - ききょう、おまえが人間だったら彼氏になってくれるだろうなぁ...-

 

すみれはマイペース、澄まして猫すわりをしたまま私をちらりと見て尾っぽをゆぅらりゆらり、そして念入りに顔を洗います。

 近くの公園の濃桃色の八重桜が風にはらはらと散っています。なぜ、桜はこんなにも心をゆさぶるのでしょう!?

 

  ...なんて、のんきな事ばかりではではありませんでした。

 朝、電車で通勤するときは、最寄の駅まで長~い下り坂を一気に、ではなく息も絶え絶えにダッシュ、約7分!! 電車は踏み切りの向こう側のプラットホームからの乗車です。遮断機が降りる前に向こう側へ渡らなくてはいけません。部屋のすぐ下にバス停があるのだけれど、バスでも駅まで5分、しかぁし、駅前が込み合うと駅より300-400m手前で下車、やっぱり駅までダッシュ!!降りかかった遮断機をくぐるようにして向こう側に渡ります。

 - 明日の朝はもう5分早く起きよう。-

と毎晩思うのですが、起きれた例はほとんどありませんでした。

 

 その朝も、バスにタッチの差で乗り遅れ長い下り坂を猛ダッシュ!!途中、あろうことか石で滑って

 - グキッ! -

すってんころりん!恥ずかしくて慌てて起き上がったのですが、

「アイタタァ!!」

右足をつくことができません。見る見るうちに足首が腫れてきました。

 

 ハイ、右足の甲、第5中足骨の骨折でした。トホホ、これでは、イモ洗い*のような満員電車での通勤は無理です。勿論、バイクも乗れるわけがありません。

  - 長い臨時休暇だぁ!-

と諦めるしかありませんでした。

 

* イモ洗い : 満員電車の様子。電車は最寄の駅へ来る頃には既に寿司詰めの様、各駅停車なので次の駅で乗って、その次の駅で降りて降りて乗って乗って乗って、また次の駅は乗って乗って、次の駅は降りて降りて降りて乗って乗ってのって乗って... はぁ!...「降ります。降ります。」と人を掻き分けて降ります。

  むかぁし、母は、里芋を洗うとき、直径40cmくらい深さ50-60cm位の木の桶に里芋と水を入れ、直径より少しだけ小さい木の板の板を立てて入れ、こじては水を替えこじては水を替え洗っていました。洗濯機みたいな感じですね。里芋の皮はつるりと剥けて手もかゆくならなくてすみました。甘辛く煮っころがした里芋は、少し土臭くてねっとり美味しくて大好きでした。今も時々我が家の食卓にのぼりますよ。