転機の訪れ

 さて、幾度季節が廻ったことでしょう。その年の夏も猫たちは蝉狩りを楽しんで私はしぶしぶ後始末をし、やっぱり大好物のスイカを夕食代わりに食べて過ごしました...

 そして、ようやく名古屋の暑い暑い夏がひと段落し秋風が心地よく感じ始めた頃、母から電話が入りました。

「きみこ、こちらに新しいリゾートホテルができるみたい。オープニングスタッフを募集しているよ。」

 私は、父が亡くなってから生まれ育った家を離れ、母も縁あって名古屋から木曽にIターンして独り住まいでした。

 ー 年老いていく母の元に越す良い機会かもしれない。それに、リーゾートホテルのグランドオープンに携わるのはきっとおもしろいことに違いないわ。-

 何年も住んだ名古屋の部屋はずいぶんと古めかしくて、でも、陽の光がたくさん降りそそぐ明るく心地よい空間でした。そこを離れるのはとても名残惜しく... 

 

 でも、新しい出発の予感は私をわくわくさせました。

 私は決心をしました。

 - よぉし、まずはお話だけでも聞いてみよう!-

 

 ところが、母は

「猫はダメ!! ダメよ、家の中をめちゃくちゃにしてしまうでしょ。」

と即、猫たちの同居を拒否。

 - ええ~、でも私はこの子たちとは離れられないよぉ。どうしよう! -

つづく