おかえり!すみれ !!

 私は、慌てふためいて2匹を探し回りました。日は暮れかかっています。母も一緒に名前を呼んでいます。

 ききょうもすみれも、足の裏の肉球はきれいなピンク色、おまけにあんまり爪を研ぐので時々爪を切っていました。毛並みも母の指摘どおり冬毛にしては貧弱で薄め、腹の方は産毛が生えているだけで地肌が見えるほどでした。今まで名古屋、それも部屋の中だけで暮らしていたのですから、それで十分だったのでしょう。でも、まだ初冬とはいえ木曽は名古屋の真冬以上の冷え込みとなります。

 - 早く、見つけなくては....

その一心でした。

 私の取り乱しようは尋常ではなかったそうです。ただただ、ききょうとすみれの名を呼んでご近所を徘徊したそうです。

  そうして、日もどっぷりと暮れ、辺りは真っ暗になりました。実家の隣は畑、野っ原、その奥はもう山が迫っています。野生の猿もいのししも出没するのです。私は門に戻ってきて頭を抱えてへたり込んでしまいました。

 すると、

「チリチリ..」

ー 鈴の音!?ー

門の奥の物置のほうから

「チリチリ..」

今度は確かに、物置の土台の下です。

ー すみれ!すみれ! ききょうもいるの? すみれおいで! ー

ー おかあさん! すみれみつけた!!ー

しゃがんで覗きこんだ私の膝にすみれが飛び込んできました!

「びぃゃ!」

 - すみれ!おかえり。どこ行ってたの?探したんだよ。ききょう!ききょうは一緒じゃないの?ききょうは何処?? -

私はすみれをぎゅっと抱きしめました。